ピロリ菌除菌とサプリメントで胃癌抑制☘️
☘️ピロリ除菌と栄養サプリメントの
胃がん抑制効果:世界最長の経過観察
(解説:上村 直実 氏)-1137
企画協力:J-CLEAR/臨床研究適正評価教育機構(2019/11/15)
☘️H. pyloriは幼児期に感染し半永久的に
胃粘膜に棲息する細菌であるが、
胃粘膜における持続的な感染により
慢性活動性胃炎を惹起し、
胃がん発症の最大要因であることが
明らかとなっている。
さらに除菌により胃粘膜の炎症が改善するとともに、胃がんの抑制効果を示すことも
世界的にコンセンサスが得られている。
しかしながら、実際の臨床現場では
除菌後に胃がんが発見されることも多く、
除菌による詳細な胃がん抑制効果を
検証する試みが継続している。
☘️今回、除菌治療のみでなくビタミン補給やニンニク摂取により、胃がん発症および胃がん死の抑制効果を示す介入試験の結果がBMJ誌に発表された。
☘️この報告の最大の特徴は、胃がんの発生を内視鏡的に確認している点と、除菌や食品補給による介入後の観察期間が22.3年間という世界最長である点である。
このコホート研究に関する以前の報告1)では14.7年の経過観察で除菌による抑制効果のオッズ比が0.61(95%CI:0.38〜0.96)であったが、今回の22年経過時点でのオッズ比は0.48(95%CI:0.32〜0.71)となり、経過が長くなるにつれて除菌による胃がん抑制効果が増加することを明確に示している点は特記すべきである。
☘️さらに、胃がん死亡者が増加するにつれて、介入後22.3年で胃がん死亡率の減少が統計学的に有意になっており、胃がん予防効果はできるだけ早期に除菌を行うほうが効果的であるというスナネズミの実験結果を支持する成績であり、日本で推進されつつある中学生に対するピロリ検診に追い風となる研究結果といえる。
☘️さらに、胃粘膜萎縮が進んだ状態でも除菌による胃がんの発生抑制効果を認めたことから、萎縮性胃炎が進行した患者や高齢者に対してもリスクベネフィットを考慮したうえで除菌治療が推奨されるべきと思われた。
☘️一方、ビタミン補助群とニンニク補助群が胃がんの発生率や胃がんによる死亡の抑制効果を示した結果には正直驚いた。胃がんの抑制効果を示すとされる食品が多数報告されているが、実際の診療現場で本気で使用できるものは皆無である。今後、大規模な介入試験により長期間の経過観察が必要と述べられているが実現は困難と思われ、本研究の経過に関する定期的な報告が期待される。一方、使用されたビタミンとニンニクの成分を用いた遺伝子変異などの基礎研究による抑制機序の解明努力も必要であろう。
オリジナルニュース
H. pylori除菌と栄養補助、胃がん抑制に効果/BMJ(2019/09/30掲載)
参考文献・参考サイトはこちら
1)Li WQ, et al. J Natl Cancer Inst. 2014;106. doi: 10.1093/jnci/dju116.