早期閉経=心血管疾患リスク📝

早発閉経、心血管疾患リスク増大の可能性/JAMA
ケアネット(2019/12/9)
 👩‍🦳閉経後女性のうち、

40歳になる前に早期の自然閉経/外科的閉経を経験した女性は、

40歳以降に閉経した女性に比べ心血管疾患のリスクが、小さいとはいえ統計学的に有意に増加することが、米国・ハーバード大学医学大学院のMichael C. Honigberg氏らの検討で示された。

 

研究の成果は、JAMA誌オンライン版2019年11月18日号に掲載された。最近のガイドラインでは、

中年女性におけるアテローム動脈硬化に基づく心血管疾患リスク評価の改善策として、

40歳以前での閉経歴を考慮することが推奨されているが、確固としたデータはないという。

 

3群を比較するコホート研究
 本研究は、2006~10年の期間に、英国のUK Biobankに登録された成人の英国居住者のうち、登録時に40~69歳で、

閉経後の女性を対象とするコホート研究である(米国国立心肺血液研究所[NHLBI]などの助成による)。

 14万4,260例の閉経後女性が登録され、

2016年8月まで追跡が行われた。

 

早発自然閉経(卵巣摘出術を受けず、40歳以前に閉経)の女性、

および早発外科的閉経(両側卵巣摘出術を受け、40歳以前に閉経)の女性を、

早発閉経のない閉経後女性(対照)と比較した。

 主要アウトカムは、

初発冠動脈疾患、

心不全

大動脈弁狭窄症、

僧帽弁逆流症、

心房細動、

虚血性脳卒中

末梢動脈疾患、

静脈血栓塞栓症の複合とした。

副次アウトカムは、主要アウトカムの個々の疾患および心血管リスク因子(初発高血圧症、脂質異常症2型糖尿病)であった。

 

主要アウトカム:自然閉経6.0% vs.外科的閉経7.6% vs.非早発閉経3.9%
 

14万4,260例(登録時平均年齢59.9[SD 5.4]歳)のうち、4,904例(3.4%)が自然早発閉経を、644例(0.4%)が外科的早発閉経を経験した女性で、非早発閉経女性は13万8,712例であった。追跡期間中央値は7年(IQR:6.3~7.7)。

 

主要アウトカムの発生は、非早発閉経群が5,415例(3.9%、発生率5.70/1,000人年)であったのに対し、自然早発閉経群は292例(6.0%、8.78/1,000人年)と有意な差が認められた(非早発閉経群との差:+3.08/1,000人年、95%信頼区間[CI]:2.06~4.10、p<0.001)。

 

また、外科的早発閉経群は49例(7.6%、11.27/1,000人年)で、同様に有意な差がみられた(同差:+5.57/1,000人年、2.41~8.73、p<0.001)。

 

多変量で補正後に、非早発閉経群と比較して、自然早発閉経群では、大動脈弁狭窄症(ハザード比[HR]:2.37、95%CI:1.47~3.82、p<0.001)、

静脈血栓塞栓症(1.70、1.27~2.29、p<0.001)、

虚血性脳卒中(1.50、1.01~2.25、p=0.04)、冠動脈疾患(1.39、1.06~1.82、p=0.02)、

心房細動(1.25、1.00~1.58、p=0.05)の頻度が有意に高く、

心不全(1.21、0.81~1.82、p=0.35)、

僧帽弁逆流症(0.73、0.34~1.55、p=0.41)、末梢動脈疾患(1.34、0.79~2.26、p=0.27)には差が認められなかった。

 

同様に、外科的早発閉経群では、僧帽弁逆流症(HR:4.13、95%CI:1.69~10.11、p=0.002)、

静脈血栓塞栓症(2.73、1.46~5.14、p=0.002)、

心不全(2.57、1.21~5.47、p=0.01)、

冠動脈疾患(2.52、1.48~4.29、p<0.001)の頻度が有意に高く、

大動脈弁狭窄症(2.91、0.92~9.15、p=0.06)、

心房細動(1.60、0.91~2.83、p=0.11)、

虚血性脳卒中(0.43、0.06~3.12、p=0.41)、末梢動脈疾患(1.34、0.33~5.41、p=0.68)には差がみられなかった。


高血圧(早発自然閉経群:HR:1.43[95%CI:1.24~1.65、p<0.001]、

外科的早発閉経群:1.93[1.37~2.74、p<0.001])、

脂質異常症(1.36[1.16~1.61、p<0.001]、2.13[1.50~3.04、p<0.001])、

2型糖尿病(全年齢層のHRの範囲:早発自然閉経群0.9~1.6、外科的早発閉経群1.3~4.7)のリスクも、

 

早発閉経群で高かった。

 主要アウトカムに関して、従来の心血管リスク因子および

 

閉経後ホルモン療法の使用で補正後のHRは、自然早発閉経群が1.36(95%CI:1.19~1.56、p<0.001)、外科的早発閉経群は1.87(1.36~2.58、p<0.001)であった。

 

著者は、「これらの関連の基盤となるメカニズムを解明するには、さらなる検討を要する」としている。 

(医学ライター 菅野 守)
原著論文はこちら

Honigberg MC, et al. JAMA. 2019 Nov 18. [Epub ahead of print]

 

📝初潮から閉経までの期間が長いと認知機能障害のリスクが低い――JPHC研究
HealthDay News(2019/11/5)
 

初潮から閉経までの期間が長い女性は認知機能障害のリスクが低いとするデータが報告された。国立がん研究センターなどの多目的コホート(JPHC)研究グループの研究によるもので、詳細は「Maturitas」10月号に掲載された。

 動物を用いた実験で、

 

女性ホルモンのエストロゲンには、脳の中の記憶に関係する海馬という場所の神経伝達機能を活性化する作用があることが報告されている。しかしヒトにおいては、

 

女性ホルモンが認知機能と関連するとの疫学研究があるものの、一致した結果は得られていない。

エストロゲン血中濃度は、

月経周期や妊娠・出産・閉経などの影響を受けるため、それらの因子が研究の結果に影響を与えていることが考えられる。

 

今回発表された研究は、

1990年に長野県南佐久郡の一般住民を対象に行った健康関連調査の回答者約1万2,000人(40~59歳)のうち、

2014~2015年に行った「こころの検診」にも参加した女性から、うつと診断された人を除外した670人のデータを解析したもの。

 

こころの検診における認知機能検査と医師の判定により、670人中227人が認知機能障害(軽度認知障害が196人と認知症が31人)と診断された。

 この227人について、アンケート調査から得た月経に関連する情報(初潮年齢、月経規則性、月経周期、出産回数、初産年齢、授乳経験、女性ホルモン剤服用経験、閉経年齢、初潮から閉経までの期間など)と、認知機能障害の発症リスクとの関連を検討した。認知機能に関連する因子(年齢、BMI、教育歴、喫煙習慣、余暇・運動活動状況、高血圧や糖尿病・うつの既往)の影響は調整した。

 その結果、初潮から閉経までの期間が長いほど、認知機能障害のリスクが有意に低下することがわかった(傾向性P=0.032)。具体的には、初潮から閉経までの期間が33年以下の人の認知機能障害発症リスクを1とした場合、38年以上の人のリスクは0.62となり、38%の有意なリスク低下が認められた(P<0.05)。なお、34~37年の人のリスクは0.89だが、この低下率は有意でなかった。

 続いて認知機能障害を軽度認知障害認知症に分けて解析すると、軽度認知障害については結果が変わらず、初潮から閉経までの期間が長いほどリスクが低下していた。一方、認知症に関してはリスク低下が有意でなくなった。この点について著者らは「認知症と診断された女性が31人と少なかったため、今後人数を増やして検討する必要がある」と述べている。

 以上の結果から、エストロゲンの曝露期間が長いほど認知機能障害を防ぐように働く可能性が示唆された。研究グループは本報告を「女性関連要因と認知機能障害との関連を明らかにした初めての研究」としており、「女性関連要因は時代や社会的背景などで変化することから、今後も研究の蓄積が必要」とまとめている。

[2019年10月15日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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Shimizu Y, et al. Maturitas. 2019 Jul 2. [Epub ahead of print]