2型糖尿病患者の血糖コントロールに性格特性は関係しない

糖尿病は「自己管理の病気」と言われる。血糖コントロールの改善・維持には、患者自身が日々の生活の中で食事療法、運動療法薬物療法をきちんと続けることが欠かせない。そのような治療を継続していくには、忍耐力の有無など患者本人の性格が治療アドヒアランスに影響する可能性が考えられる。しかし今回、患者の性格と血糖コントロールの良しあしは関連がないことを示唆する研究結果が、「Psychiatry Investigation」1月25日オンライン版に掲載された。

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 獨協医科大学精神神経科の古郡規雄氏(研究時点の所属は弘前大学医学部精神科)らは「ビッグファイブ理論」に基づいて糖尿病患者を性格特性で分類し、HbA1cとの関連があるかを検討した。ビッグファイブ理論は5因子モデルとも呼ばれ、外向性、協調性、勤勉性、神経症傾向、開放性という5つの尺度で個人の性格を分析する手法。近年、精神医学の研究と臨床で広く用いられている。

 今回の研究は弘前大学病院の外来2型糖尿病患者を対象とし、治療期間が1年に満たない患者や中等度以上の認知症または精神疾患、失明患者などを除いた504人から、5因子モデルに関するアンケート日本語版(Ten Item Personality Inventory;TIPI-J)の有効回答を得た。男性が58.1%で平均年齢は63.9±12.5歳、BMI25.1±4.2、HbA1c7.1±0.9%で、経口血糖降下薬が処方されている患者が88.9%、インスリンが処方されている患者が47.0%占めていた。

 全患者を対象としてHbA1cと関連する因子を検討すると、単回帰分析ではBMIインスリンの使用が正相関、年齢と飲酒習慣が逆相関するという有意な関連が認められた。5因子モデルの性格特性は、いずれも有意な関連が見られなかった。また重回帰分析では、有意な因子は抽出されなかった。

 次に、インスリンを使用している患者と使用していない患者に分けて、HbA1cとの関連を検討すると、インスリンを使用していない患者における単回帰分析で、BMIHbA1cと正相関していた。HbA1cと逆相関する因子としては、年齢、未婚などとともに、5因子モデルの神経症傾向の関連が認められた。ただし、重回帰分析により神経症傾向とHbA1cの関連は有意でなくなった。インスリンを使用している患者での重回帰分析の結果は、年齢のみがHbA1cと有意に逆相関する因子だった。

 これらの結果を踏まえ著者らは「インスリンを使用していない場合に性格特性の一部が血糖コントロールに影響を与える可能性は示されたものの、日本人2型糖尿病患者のHbA1cと性格特性には関連が認められなかった」とまとめている。また本研究の限界点として、TIPI-Jは簡便な指標ではあるが5因子モデルの評価とは完全には一致しないことや横断研究であることなどを挙げ、「糖尿病患者の性格特性と血糖コントロールの関係について確証を得るには、より大規模なサンプル数での縦断研究が必要」と述べている。

[2020年3月2日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.