糖尿病の発症をAIが高精度で予測

糖尿病の新規発症を人工知能(AI)で予測できる可能性が報告された。金沢大学大学院医学系研究科循環器内科の野村章洋氏らの研究によるもので、詳細は米国内分泌学会(ENDO2020、3月28~31日、米サンフランシスコ)で発表予定であったが、新型コロナウイルス感染症の感染拡大の影響で開催中止となり、「Journal of the Endocrine Society」3月31日号(special supplemental section)に抄録が掲載された。

 糖尿病は心疾患やがんなどの重篤な健康障害のリスク増加と関係しており、糖尿病の発症予防がそれら疾患の発症・進展や、早期死亡リスクを減らす鍵となる。しかしこれまでの糖尿病の発症予測方法は、糖尿病を発症した人を対象に後方視的に既知のリスク因子を解析する手法が中心で、糖尿病でない人の集団から誰が糖尿病になるかを高精度に特定することは難しかった。研究グループは、2008~2018年の金沢市における13万9,225人、50万9,153件の特定健診データを基に、機械学習による糖尿病新規発症予測モデルを構築した。

 2008年時点で糖尿病でなかった6万5,505人のうち4,696人(7.2%)が、調査期間中に糖尿病を新規発症していた。6万5,505人中3万6,303人の身体所見、血液検査、尿検査、問診票などのデータを用いて機械学習をさせ、予測モデルの調整および検証用として、それぞれ1万3,101人分を用いた。その結果、最終的に完成した予測モデルは、全体的な精度として94.9%の確率で、糖尿病でない集団からの糖尿病新規発症を的中させることが分かった。

 筆頭著者である野村氏は、「現在のところ、健康な人の集団から誰が糖尿病を発症するかを予測する、完成された手段はない」とし、「機械学習を用いることで既存のリスクスコア以上に、将来、糖尿病を発症するハイリスクグループを正確に特定できるようになるだろう」と述べている。また「さらに、糖尿病の発症予防のために医療機関を受診する人が増える可能性もある」と付け加えている。

 機械学習では、明確にプログラムされていない内容でもコンピューター自体が学習を続ける。時間の経過とともに、機械学習アルゴリズムは新しいデータを得て、そのたびにパターン認識の精度が向上していく。

 野村氏は、機械学習によって構築した予測モデルを使い、糖尿病ハイリスクと判定されたグループに対するスタチン投与の有効性を臨床試験により検討することが、本研究の次のステップになると語っている。

[2020年3月31日/HealthDayNews]Copyright (c) 2020 HealthDay. All rights reserved.