腸内細菌の代謝産物が認知症リスクに関連 もの忘れ外来受診者の便検体を解析 2020年05月29日 05:00 記事をクリップする

国⽴⻑寿医療研究センターもの忘れセンター副センター⻑の佐治直樹氏らは、同センターもの忘れ外来を受診した患者の便検体を収集し、バイオバンクに保存された臨床情報を活⽤して腸内細菌と認知機能との関連を解析。腸内細菌における特定の代謝産物が認知機能と強く関連していたと報告した。研究結果の詳細は、Sci Rep(2020年5月18日オンライン版)に掲載された。
アンモニアは有意に増加、乳酸は有意に減少
 佐治氏らは、同センターもの忘れ外来を受診した128例を対象に認知機能検査や頭部MRI検査などを実施し、便検体を同センターのバイオバンクに収集。T-RFLP (Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism)法を用いて腸内細菌を解析し、液体クロマトグラフィなどで代謝産物の濃度を測定し、代謝産物と認知症との関連性について解析した。

 その結果、アンモニアなどの代謝産物は認知症患者において有意に増加し、乳酸は減少していた(図)。

図. 各代謝産物濃度が1標準偏差(SD)上昇するごとのオッズ比

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これらの関連性は、多変量解析によって認知症の既知の危険因⼦を調整しても同様の傾向であった。

 この結果は、年齢などといった危険因⼦とは独⽴して、糞便中のアンモニアや乳酸濃度が認知症と関係することを⽰唆しているという。

 今回得られた知見について、同氏らは「認知症の機序解明に寄与する可能性がある。特に認知症患者で糞便中の乳酸濃度が低下していた点は、新規予防法開発の契機になるかもしれない」と述べている。

(陶山慎晃)