陰経をファスナーに挟んだら⚠️
【第153回】陰茎をファスナーに挟んだらどうすればいい?
企画・制作:ケアネット(2019/12/20)
インデックスページへ戻る
男の子を持つ母ですので
こういった知識も一応習得しておかなくては
と思います✨⤴︎
あの『「寄り道」呼吸器診療』などの数々の著書で知られる新進気鋭の呼吸器科医 倉原 優 氏が、ケアネット会員のためにお届けするオリジナルエッセー。真面目なのに面白い、そんな医学論文を毎回紹介します。
⚠️【第153回】陰茎をファスナーに挟んだらどうすればいい?
photoACより使用
ファスナーのことを英語ではzipper(ジッパー)あるいはzip fastener(ジップファスナー)といいます。
ジッパーはアメリカのグッドリッチ社の登録商標です。一般名である、slide fastener(スライドファスナー)という呼び方も普及しています。
ちなみに、チャックというのも海外の会社の商標登録らしいです。
ややこしいので、このコラムではファスナーで統一したいと思います。
さて、ファスナーを陰茎に挟むというのは、男性ならば誰しも一度は経験したことがあると思いますが、救急受診が必要になるほどの外傷というのは、かなりまれです。どんな勢いでファスナー上げたん!? と聞きたくなっちゃいます。
PubMedで検索しても、数えるくらいしか症例報告がヒットしませんが、古いものでは1977年からあるため1,2)、ファスナーは半世紀近くにわたって世の男性を悩ませた天敵であることが想像されます。
ファスナーの構造は、
1.テープ
2.エレメント(務歯)
3.スライダー(開閉部分)
の3つの部分に大別できます(写真)。テープは布なので、外傷医学的に問題になるのは、エレメントとスライダーの2つです。ここがガッチリかみ合ってしまうことで、陰茎あるいは精巣の皮膚を損傷してしまうのです。
肉を挟んだ後、元に戻せばいいじゃないとおっしゃるご婦人もいらっしゃるかもしれませんが、ガッチリとお肉を挟んでしまったファスナーは、容易には戻りませんのよ。ましてや、
男性の局部の皮膚はデリケートなゴム風船のようなもの。
いったん嵌まりこんでしまった後、戻そうとすることで外傷を悪化させる可能性があるのです。
八方ふさがり、四面楚歌。
ではどうすればよいのか。
報告として多いのは、
シンプルに2と3をぶっ壊す方法です。
安全性が高いのは、
2.スライダーを下で切断して、上方に噛み合わせを解除することです。
そうすれば、スライダーが開放され、
パラパラとファスナーが解かれていきます。
ただ、下からのアプローチのみでは対処できない場合、上にある
3.エレメントをぶっ壊す必要があります。ワイヤーカッターなどを用いることが多いです。フリーで使えるイラストがなかったので、いらすとやのワイヤーカッターっぽいイラストを使って、簡易的に図示します(図)。
日本の長野松代総合病院から、6歳と11歳の小児例が報告されています3)。
フリーで閲覧できますが、具体的にどうやって解除できるのか写真付きで報告されているので、是非ご覧ください。
このファスナー外傷、包皮が長い小児例の報告が多いのですが、成人男性でもチラホラ報告があるので4,5)、
多忙な日々、短時間でお小水を済ませてしまう男性医師の皆さんは、ファスナーを勢いよく閉めないよう、注意してください。
そして、私が声を大にして言いたいのは、
「社会の窓」にファスナーなんて要らないと思うんです。ボタンでいいじゃん!! なんであんな凶器を社会の窓の入り口に設置するんや!
参考文献
1)Oosterlinck W. Unbloody management of penile zipper injury. Eur Urol. 1981;7(6):365-6.
2)Flowerdew R, et al. Management of penile zipper injury. J Urol. 1977 May;117(5):671.
3)Nakagawa T, et al. Penile zipper injury. Med Princ Pract. 2006;15(4):303-304.
4)McCann PA. Case report: a novel solution to penile zipper injury--the needle holder. ScientificWorldJournal. 2005 Apr 6;5:298-299.
5)Rose G, et al. Ultrasound-guided dorsal penile nerve block performed in a case of zipper entrapment injury. J Clin Ultrasound. 2017 Nov 12;45(9):589-591.