フィルターを使って淹れるコーヒーが心臓に良い可能性を示唆 HealthDay News(2020/5/19)

コーヒーを飲むのなら、フィルターを使って淹れるコーヒーが最も健康的であることが、ヨーテボリ大学(スウェーデン)のDag Thelle氏らによる研究で示された。コーヒーを日常的に飲んでいる人は、コーヒーを飲む習慣がない人と比べて寿命が長かったという。ただし、これが当てはまるのはフィルターで濾過して抽出したコーヒーを飲んでいる場合のみで、エスプレッソなどフィルターで濾過しないコーヒーを愛飲する人では寿命の延長は認められなかったとしている。詳細は「European Journal of Preventive Cardiology」4月22日オンライン版に発表された。

 Thelle氏らが今回報告した研究は、20~79歳の男女50万8,747人を対象に実施したもの。20年間の追跡期間中に4万6,341人があらゆる死因で、1万2,621人が心血管疾患で、6,202人が虚血性心疾患で、2,894人が脳卒中で死亡していた。体重や血圧値、脂質値、運動や喫煙の習慣などを調整して解析した結果、コーヒーをほとんど、あるいは全く飲まない人と比べて、フィルターで濾過して抽出したコーヒーを日常的に飲む人では全死亡リスクが15%低かった。

 また、コーヒーを飲む習慣がある人の間では、虚血性心疾患や脳卒中による死亡リスクは、フィルターで濾過して抽出したコーヒーを1日に1~4杯程度飲む人で最も低かった。これに対し、死亡リスクが最も高かったのは、フィルターで濾過しないコーヒーを1日に9杯以上飲む人だった。

 フィルターで濾過しないコーヒーは、挽いた粉が熱湯に触れる時間が長いことが特徴で、エスプレッソやボイルド・コーヒー、フレンチプレスで淹れたコーヒーがその例である。これまで、こうしたコーヒーには天然由来の油脂が多く含まれていることから、血中コレステロール値を上昇させるのではないかと考えられてきた。Thelle氏は、今回の研究結果はこのことが影響している可能性があるとし、「健康に及ぼす影響という点で言えば、フィルターで濾過して淹れるコーヒーが最も好ましいといえる」と述べている。

 研究結果の報告を受け、米国の栄養と食事のアカデミー(Academy of Nutrition and Dietetics)の元会長で食品・栄養コンサルタントのConnie Diekman氏は、この研究で因果関係が証明されたわけではないことを強調。例えば、コーヒーに砂糖やクリームを加えているのかなど、研究対象者の食事内容に関する情報が欠如していることを指摘し、食事の違いが結果に影響した可能性があるとの見解を示している。また、同氏は「確かにフィルターで濾過しないコーヒーには、コレステロール値を上昇させるコーヒー豆の成分も含まれているが、コレステロール値を上げるほどの量ではない」と説明している。

 栄養と食事のアカデミーのスポークスパーソンで米セント・ルイス大学のWhitney Linsenmeyer氏も「興味深い報告ではあるが、1日当たりのコーヒーの総摂取量や甘味料の使用の有無など、コーヒーの飲み方が結果に影響した可能性はある」と指摘するなど、Diekman氏と同様の見解を示している。

 また、Diekman氏はカフェインについても言及し、「これまでのエビデンスに基づけば、妊婦や授乳中の女性を除けばほとんどの成人にとって安全なカフェインの摂取量は1日当たり400mg(コーヒー粉末10gを熱湯150mLで抽出した場合、60mg/100mLのカフェインが含まれる)までだと考えられる」と話している。