勃起不全が心房細動リスク上昇と関連


HealthDay News(2019/12/11)
 勃起不全(勃起障害、ED)の男性は、心房細動と診断される傾向が強いことが新たな研究で明らかにされた。心房細動は不整脈の一種で、血栓脳卒中心不全の原因となることもある。米国では最大610万人がこの疾患に罹患しているとされる。研究の詳細は、米国心臓協会の年次集会(AHA 2019、11月16~18日、米フィラデルフィア)で発表された。

 過去の研究では、EDは心血管疾患と関連することが示されていた。そこで研究グループは今回、心房細動がこの知見にどう当てはまるのかを明らかにしようと試みた。研究を率いた米ノースウエスタン大学の循環器専門医である田中仁啓氏は、「EDの症状が心血管疾患の2~3年前に現れることはよく知られている。EDの症状を後の心房細動を予測する指標として利用できれば、患者を早期に治療できる可能性があるし、うまくいけば疾患の進行を止めることもできるかもしれない」と期待を示す。

 研究では、心房細動の既往のない高齢男性1,760人を対象とした。4年後に心房細動と診断された人の割合は、EDがあると申告した男性では9.6%だったのに対し、EDのない男性では2.9%であった。喫煙、体重、糖尿病、血圧などのリスク因子を考慮しても、EDのある男性が心房細動と診断される確率はEDのない男性と比べて66%高かった。

 この結果について田中氏は、「かなり強い関連性が認められた。医師は、EDが認められる患者に対しては、その他の心血管リスク因子について調べ、できる限り早く治療を開始するべきだ」と述べている。

 この研究の弱点の1つは、EDの有無は患者の自己申告によるものであり、それが血管の問題によるものなのか、あるいは心理的問題によるものなのかを研究チームが把握していない点である。田中氏はさらに、「不整脈は突然現れたり消えたりするため、患者の中には症状を訴えない人もいる」として、心房細動の検出が極めて難しい点も研究の限界として挙げている。同氏は今後の研究で、テストステロン値、EDと心房細動の相互作用を掘り下げていきたいとしている。

 今回の研究には関与していない、米ジョンズ・ホプキンズ大学病院のHugh Calkins氏は、「私の担当する男性患者においてもEDは非常に多く認められるが、この研究結果には納得させられるものがあった」と話す。そして、「大変独創的な研究だ。このテーマに関する研究が今後、間違いなく展開していくだろうし、血管の健康とED、心房細動の関係についての議論も進むだろう」と今後の展開を予測する。なお、同氏は、AHA、米国心臓病学会(ACC)、および米国不整脈学会(HRS)が共同で最近改訂した心房細動ガイドラインの著者の一人である。

 Calkins氏はさらに、EDと「隠れ心房細動」とも呼ばれる無症候性心房細動との関連について研究を重ねていく必要があると指摘する。「無症候性心房細動のスクリーニングは近年注目されている領域である。ED患者はもれなく、7日間のモニターやスマートウォッチを用いた心房細動のスクリーニングを1年に1度受けるべきかという問題が当然出てくるが、研究結果は、スクリーニングを受けることが糖尿病や体重管理、睡眠時無呼吸といったリスク因子に対する早期の対応につながることを示唆している」と説明している。