COVlD-19と心筋損傷について🦠

武漢のデータがCOVID-19と心筋損傷を関連付ける
(2020/4/10)

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Wuhan Data Link COVID-19 With Myocardial Damage
Mitchel L. Zoler / Medscape 2020/3/27

中国・武漢でのパンデミックが始まった時の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)関連の心筋損傷に関する初のデータは、新型コロナウイルスSARS-CoV-2)が広がり症例数が増加するにつれ欧米諸国においてどのようなことが予想されるかということに、臨床医や一般大衆への「警鐘」としての役割を果たすものである。基礎疾患として心血管疾患を有する患者において最も重篤となる傾向がある感染症が、そのような患者を多数含む集団を直撃すればするほど、「ひるませる」に十分な死者数が積み上がる。

武漢の大学病院2施設で治療を受けたCOVID-19患者計603例に関する2件の報告は、感染症に関連した「心筋損傷を発症する患者の非常に類似した特性」を説明するものであり、それらの報告からは、「一貫した像が浮かび上がる」。

「COVID-19により心筋損傷を発症する患者は、心筋損傷がない患者と比較し、急性呼吸窮迫症候群の発症率が高く、補助換気の必要度が高まるという、疾患が重篤であることを示す臨床的エビデンスがある。また心筋損傷をより発症しやすい患者は、「既存の心血管系の合併症および糖尿病を有する高齢患者」である、とRobert O. Bonow氏らはオンラインで発表された論説(JAMA Cardiol. 2020 Mar 27)に記している。

心血管疾患を有する高齢患者が相当数いることから、今回の新たな知見は欧米諸国にとってとくに重要である、とノースウェスタン大学(米国・シカゴ)の内科教授であるBonow氏らは述べている。

論説において引用されている2件の報告のうちの1件では、2020年1月20日~2月10日にCOVID-19と確定診断されて武漢のRenmin Hospitalに入院した416例がレビューされており、症例の20%で心損傷のエビデンス(心電図検査および心エコー検査での新規異常の有無にかかわらず、心臓バイオマーカーである高感度トロポニンIの血中値が基準値上限99パーセンタイル値超であることと定義)が確認されたことが明らかになっている。

本解析では、心筋損傷があった群の院内死亡率は51%と、心筋損傷がなかった群の5%と比較し顕著に高かったこと、そして、心筋損傷を有した患者のなかでも高感度トロポニンIの上昇度が高かった患者の死亡率がより高かったことも明らかになっている(JAMA Cardiol. 2020 Mar 25)。

2020年1月23日〜2月23日に武漢のSeventh HospitalでCOVID-19と確定診断された187例を対象とした2件目の報告でも、同様の結果が得られており、血漿トロポニンT(TnT)値上昇を基に評価したところ、入院時の心筋損傷の有病率は28%であったこと、また患者の35%は高血圧、冠動脈疾患、心筋症を含む心血管疾患(CVD)を有していたことが明らかになっている。入院時のTnT値上昇およびCVDの両方が、死亡率の大幅な上昇と関連した。

TnT値上昇が認められたが基礎疾患としてCVDがなかった群での死亡率は38%であったが、TnT値上昇もCVDもなかった群では8%であった。入院時にCVDがありTnT値上昇が認められた群の院内死亡率は69%であり、CVDはあったがTnT値上昇がなかった群では13%であった(JAMA Cardiol. 2020 Mar 27)。

慢性冠動脈疾患を有する患者は、感染の急性期に急性冠症候群を発症するリスクが高まるが、それは感染中に心筋への負担が著しく増大し、血管および心筋炎と同様にアテロームプラークの不安定化や破裂につながりうる重度の全身性炎症ストレスが原因である可能性がある、とBonow氏らは述べている。

さらに、心不全患者は、感染症が重症化した際に血行動態が不安定になりやすい。「したがって、高齢者で基礎疾患により多くの心血管疾患を有する患者は、若年かつ健康な人と比較し、COVID-19に対する重篤かつ激しい炎症反応が生じている最中に有害アウトカムおよび死亡のリスクが高くなりやすいだろう」と同氏らは記している。

また同氏らは、中東呼吸器症候群(MERS)に関連した経験に基づき、COVID-19の原因となるSARS-CoV-2による急性または劇症型心筋炎と、新たな心不全発症の可能性についても言及している。もう1つの気掛かりな観察結果は、SARS-CoV-2が主要な侵入レセプターである細胞表面のアンジオテンシン変換酵素II蛋白に結合し、「血管内皮および心筋に直接感染する可能性を上昇させる」が、その過程自体が心筋損傷や心筋炎を引き起こしうる、というものである。

武漢のCOVID-19患者に関する今回の新たな知見は、今や世界的なパンデミックとなった事態から得られた早期データの一例であり、一般化可能性に関する疑問を呼び起こすものであるが、しかし当面の間は、これら早期の症例から得られる重要なメッセージは、SARS-CoV-2の感染を予防することが最も重要である、ということである。「より多くのことが判明するまでは、これらの1次データ報告で言及されている集団は、厳格な手指衛生、社会的距離、そして可能な場合はCOVID-19検査を実施することを何よりも厳守すべきである」と著者らは述べている。

Dr. Bonow and coauthors had no disclosures.

JAMA Cardiol. Published online March 27, 2020. Full text, Editorial

This article first appeared on MDedge.com.

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