オリーブ油の摂取がCVD低下と関連

(2020/3/27)
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Olive Oil Intake Linked to Reduced CVD
Debra L. Beck / Medscape 2020/3/9

2件の大規模コホート試験における心血管疾患(CVD)9,797例より得られた知見から、米国男女のオリーブ油摂取量の増加と冠動脈疾患(CHD)および全CVDのリスク低下の関連性が明らかになった。

1日にティースプーン(小さじ)約1杯(5g/日)のマーガリン、バター、マヨネーズ、乳製品の脂肪を、同量のオリーブ油に置き換えることは、全CVDおよびCHDリスクを5~7%低下させることと関連したと、ハーバード大学公衆衛生大学院(マサチューセッツ州、ボストン)のMarta Guasch-Ferre氏は報告した。

「本結果から得られる最も重要なメッセージは、心血管疾患予防のために、動物由来の飽和脂肪をオリーブ油などのより不飽和度の高い植物油に置き換えることに対する推奨について、われわれがさらなる裏付けを提供する、ということである」と同氏はインタビューにおいて述べた。

研究者らは、3月5日にアリゾナ州フェニックスで開催された、米国心臓協会(AHA:American Heart Association)のEpidemiology, Prevention, Lifestyle and Cardiometabolic Health Scientific Sessionsにおいて本結果を報告した。本結果は同時に、Journal of the American College of Cardiology誌に掲載された。

ほかの食事や生活習慣因子を調整後、オリーブ油非摂取群と比較したところ、高摂取群(1日にテーブルスプーン[大さじ]2分の1杯超または7g超)のCVDリスクは14%低下し、CHDリスクは18%低下した。

オリーブ油の摂取と、全脳卒中および虚血性脳卒中の間には有意な関連はなかった。

しかしながら、本結果についてコメントを求められたマックマスター大学(カナダ、オンタリオ州、ハミルトン)のSalim Yusuf氏は、「この研究メソッドの限界を考慮すると」、本試験は良好に実施されているが、「まったく説得力がなく」、食事に関する推奨に変更を加えるかどうかについての根拠を提供するものではない、と述べた。

「食事の1つの要素を変えても、大きな変化が得られるという期待はできないため、観察された5~7%というリスク低下率は妥当な値だが、このメソッドの誤差範囲内でもある。そのため、本当に取るに足らない値である」と、同氏はtheheart.org | Medscape Cardiologyのインタビューにおいて述べた。

「観察研究のデータには多くの交絡が存在し、5%、10%、20%という違いを明確に表すことはできない。確信を得るには、もっとずっと大きな差が必要である」と同氏は付け加えた。

同氏はまた、本試験の結果は、オリーブ油摂取の脳卒中リスクに関するベネフィットを明らかにした最近のメタ解析の結果と矛盾している、とも述べている。

「本試験においてリスクが低下したのはCHDであり、そのメタ解析において低下したのは脳卒中であったことから、結果が一致していない」と同氏は述べた。

米国でも地中海食研究を

オリーブ油摂取とCVDリスクとの関連を米国の集団で評価した研究は存在しない。オリーブ油の摂取量が近年増加していることを考慮し、研究者らは、地中海食の摂取集団で認められる関連が、米国でも見られるかどうかを確認したいと考えた。

Guasch-Ferre氏らは、ベースライン時にがん、心疾患、脳卒中がないNurses' Health Study(1990〜2014年)の女性6万1,181人およびHealth Professionals Follow-up Study(1990〜2014年)の男性3万1,797人のデータをプールした。両Studyの食事内容は半定量食物摂取頻度調査票で検証されており、ベースライン時とその後4年ごとのデータを評価した。

「過去30〜40年間に、欧州の集団ではオリーブ油が心疾患に有益であることを示す数件の観察研究が存在しているが、米国の集団においてこの関連を示した研究は存在しなかった」と同氏は述べた。

オリーブ油と、ほかの植物油(たとえばコーン油、紅花油、大豆油、キャノーラ油)を組み合わせたものとを比較した場合も、結果は同様であった、と同氏はtheheart.org | Medscape Cardiologyに対し述べた。

「本試験の限界は、オリーブ油の摂取量が地中海食の摂取集団ほど多くなかったため、異なる種類の健康的な油の間で関連を調べることができなかった点である」と同氏は述べた。研究者らは、情報が記録されていないため種類の異なるオリーブ油を区別することはできなかった、と述べている。

オリーブ油の平均摂取量は、1990年の1.30g/日から2010年には4.2g/日へと増加した。最も使用量が多かった群の平均摂取量は、12g/日(小さじ約2.5杯)であった。それに対し、PREDIMED試験のスペイン人参加者におけるベースライン時の平均摂取量は40g/日であった。

Yusuf氏は「多数の観察研究が実施され、その中でも本試験は世界最高の研究グループの1つが実施した、質の良い試験であるが、あくまで観察研究であり、その差は非常に小さいものである」と述べた。

同氏は、飽和脂肪の摂取と心疾患に関する最新の研究結果を詳細にレビューした合意声明を発表した、著名な科学者からなるグループのメンバーであった。

同グループは合意声明の発表後、現行の最も厳格な科学的手法によっては、飽和脂肪の摂取量を制限する政府の政策が引き続き実施されることを支持することはできない、ということに合意した。

同グループのメンバーは、Dietary Guidelines for Americansの発表に関し責任を負う米国農務省および保健福祉省の長官に対し、「近く発表予定の2020年版Dietary Guidelines for Americansに関し、飽和脂肪の摂取に関する制限を撤廃することを、真剣かつ早急に検討すべきである」と提言する文書を送付した。

レシピの中でオリーブ油の代わりにバターを使用することに何らかの不安はないか、と質問されたYusuf氏は、「不安はまったくないが、ほかのすべての事柄と同様に、重要なのは適度な量と多様性である。さまざまな種類の自然由来の食品を適量摂取することに対し、私はどのような不安も抱かない」と回答した。

The study was supported by research grants from the National Institutes of Health. Guasch-Ferre has disclosed no relevant financial relationships.

J Am Coll Cardiol. Published online March 5, 2020. Full text

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