魚油サプリは心臓に良い――摂取量が多いほどリスクが低下


HealthDay News(2019/11/4)
 魚油に多く含まれているオメガ3脂肪酸の摂取により心血管疾患(CVD)リスクが低下することが示唆されているが、否定的な報告もある。その一方、米国では数百万人が魚油サプリメントを摂取しているとされる。今回、その行動が間違っていない可能性を示す研究結果が報告された。米ハーバード大学T.H.チャン公衆衛生大学院のJoAnn Manson氏らによるこの報告は、「Journal of the American Heart Association」9月30日オンライン版に掲載された。

 Manson氏らの研究は、オメガ3脂肪酸とCVDの関連を検討した13件の報告をメタ解析したもの。同様の研究は過去にも行われているが、今回は解析対象者数が計12万7,477人に及び、これまでに報告されている最大規模の研究より64%多い。解析対象者は、男性が59.7%で平均年齢64.3歳、BMI28.0、糖尿病患者39.4%、脂質低下薬使用患者72.6%。オメガ3脂肪酸の摂取量は研究により376~4,000mg/日の幅があったが、多くの研究は約840mg/日だった。

 平均5.0年の介入期間中に3,838件の心筋梗塞、3,008件の冠動脈性心疾患による死亡が発生した。オメガ3脂肪酸を摂取していた人は摂取していない人に比べて、心筋梗塞が12%、冠動脈性心疾患による死亡が8%少なく、有意なリスク低下が認められた。なお、過去の多くの研究と同様に、オメガ3脂肪酸摂取による脳卒中のリスク低下は観察されなかった。

 今回の研究では、オメガ3脂肪酸の摂取量が多いほどCVDリスクが低下するという用量反応関係も確認された。具体的には、オメガ3脂肪酸摂取量が1,000mg/日増えるごとに、心筋梗塞のリスクが9%、冠動脈性心疾患のイベントリスクが7%低下していた。オメガ3脂肪酸摂取量がひときわ多かった(4,000mg/日)1件の研究を除いて解析しても、用量反応関係は有意だった。

 ただし今回の研究は、魚油が心臓に良いことを直接証明するものではなく、サプリメントを摂取している人が、普段から健康的な生活を心掛けていることを表している可能性も否定はできない。しかし研究者らは、今回の研究で用量反応関係が認められた点に注目している。

 米レノックス・ヒル病院のKatrina Hartog氏は、「サプリメントはリスクを軽減するだけであり、心疾患の主要なリスク因子の改善に取り組むことこそが最大のベネフィットを生む」と治療の基本を述べつつも、「今回の知見は、魚油が良いものであると再認識させる」としている。

 米ノースウェル・ヘルス・サンドラ・アトラス・バス心臓病院のGuy Mintz氏は、「この研究にはいぶかしい(fishyな)点が何もない」と述べている。また魚油が効果を発揮する理由を「機序は不明だが、抗炎症作用や抗不整脈作用によるのかもしれない」と解説。同氏は心疾患リスクが高い患者で特にサプリメントの効果が最も高いと推測しており、今回の研究結果に基づき「糖尿病、心疾患の既往、ステント留置、冠動脈バイパスの手術歴があるなど、CVDリスクが高い場合、オメガ3脂肪酸補充療法の追加について、医師は患者と話し合うべきだ」と述べている。

 この研究は、米国立衛生研究所(NIH)の資金援助で実施された。

[2019年9月30日/HealthDayNews]Copyright (c) 2019 HealthDay. All rights reserved.利用規定はこちら
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Hu Y, et al. J Am Heart Assoc. 2019 Oct;8. [Epub ahead of print]