入浴頻度と心血管疾患リスクに逆相関関係 中年日本人3万人対象の研究

 1週間当たりの入浴頻度と心血管疾患(CVD)リスクに逆相関関係が認められた。大阪大学大学院公衆衛生学教室の鵜飼友彦氏、同教室教授の磯博康氏らが中年日本人約3万人を対象に行った調査で明らかになった。詳細はHeart(2020年3月24日オンライン版)に報告された。

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40~59歳の中年を約20年追跡
 入浴は睡眠の質や健康に関する自己評価と関係するが、長期のCVDリスクに及ぼす影響は明らかでない。またわが国では、入浴と関連する突然死の発生頻度が高く、年間1万9,000件と推定されている。

 鵜飼氏らは今回、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に資することを目的に行われている多目的コホート研究JPHCの参加者のうち、ベースライン時に40~59歳でCVD、がんに罹患していなかった3万76人を抽出。週の入浴回数(①0~2回:1,911人②3~4回:6,547人③5~7回:2万1,618人)で3群に分類して、1990年から2009年まで追跡。Cox比例ハザードモデルを用いて、既知のCVD危険因子や食事因子などを調整して、入浴頻度とCVDリスクの関係を検討した。

週5~7回の入浴でCVDリスクが28%低下
 53万8,373人・年の追跡期間中に、CVDが2,079件、冠動脈疾患(CHD)が328件(心筋梗塞275件、心臓突然死53件)、脳卒中が1,769件(脳梗塞991件、脳内出血510件、くも膜下出血255件、分類不能13件)発生した。

 解析の結果、入浴回数とCVDリスク、脳卒中リスク、脳梗塞リスクに有意な逆相関関係が認められた。

 入浴回数が週0~2回群に対し、5~7回群ではCVDリスクは28%〔ハザード比(HR )0.72 、95%CI 0.62~0.84、傾向のP<0.001〕、CHDリスクは35%(同0.65、0.45~0.94、傾向のP=0.065)、脳卒中リスクは26%(同0.74 、0.62~0.87、傾向のP=0.005)、脳梗塞リスクは23%(同0.77、0.62~0.97、傾向のP=0.467)、脳内出血リスクは46%(同0.54、0.40~0.73 、傾向のP<0.001)いずれも低下した。

 入浴回数と心臓突然死リスク、くも膜下出血リスクに関連は認められなかった。

熱いお湯でもリスクが低下
 お湯の温度(「ぬるい」「温かい」「熱い」)で分類してみると、入浴回数とCVDリスクの逆相関関係はさらに強くなった。温かい湯では入浴回数が週0~2回群に対して5~7回群ではCVDリスクは26%低下(HR 0.74、95%CI 0.61~0.90、傾向のP=0.008)、熱い湯ではCVDリスクは35%低下(同0.65、0.44~0.95、傾向のP=0.056)したが、お湯の温度との相互作用は有意ではなかった(CVDとの相互作用のP=0.63、CHDとの相互作用のP=0.72、脳卒中との相互作用のP=0.88)。

 ベースラインから5年以内または10年以内にCVDを発症した対象を除外して解析したところ、入浴回数とCVDリスク、脳卒中リスクとの逆相関関係は少し弱まったが有意であった。

 以上から、中年日本人において1週間の入浴回数とCVD リスクに逆相関関係が見られることが分かった。鵜飼氏らは「これまでにわれわれは入浴回数の多さと高血圧リスクの低下に有意な関連があることを報告してきた。今回の入浴回数の多さとCVDリスク低下の関係は一部入浴回数の増加に伴う高血圧リスクの低下によるものと考えられる」と述べている。

 英国保健サービス(NHS)のAndrew F. Burden氏は同誌の付随論評(2020年3月24日オンライン版)で「熱いお湯での入浴は危険で、入浴中の死亡は加齢や湯温の上昇に伴い増加することは疑いようがない。ただし、入浴中の死亡にCVDが関連している可能性は低く、入浴中の熱中症による意識障害と溺死が原因の可能性が高い」と解説している。