米・新型コロナ感染妊婦の分娩例を報告 経腟分娩で新生児感染は認めず 2020年04月17日 05:10

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米・MedStar Washington Hospital CenterのSara N. Iqbal氏らが、米国における新型コロナウイルスSARS-CoV-2)感染症(COVID-19)妊婦の分娩経過をN Engl J Med(2020年4月1日オンライン版)に発表した。合併症のない自然経腟分娩例で、新生児感染または羊膜内感染の徴候は認められていない。
産科受診3日前から発熱、咳など発現
 患者は同院の産科を受診した妊娠39週(7妊5産)の34歳女性で、胎動の減少を自覚し、受診3日前から発熱、悪寒、乾性咳、筋痛が現れたが、最近の旅行歴はなかった。夫にも受診24時間前から同様の症状が認められた。

 緊急の産科学的介入は不要と判断され、患者にサージカルマスクを装着させて救急診療部へ移送した。

 救急診療部における患者のバイタルサインは体温36.6℃、心拍数125回/分、血圧133/75mmHg、呼吸数18回/分、酸素飽和度は99%(室内気)であった。呼吸音の減弱はあったが副雑音はなく、胸部X線画像で網状の間質性陰影、臨床検査でリンパ球減少が認められた。胎児心拍のノンストレステストはリアクティブで、超音波検査により正常な単胎妊娠と判明した。

 上咽頭・中咽頭拭い液を採取し、COVID-19を含む呼吸器ウイルス感染症の検査を行ったところ、6時間以内にCOVID-19を除き陰性との結果が出た。

分娩経過中にCOVID-19陽性が判明
 患者は個室入院となり、入院2日目に不規則な陣痛が始まったため、オキシトシンにより陣痛を促進。検体採取から21時間後の分娩経過中にCOVID-19陽性が判明した。分娩第2期にエアロゾル感染のリスクが生じ、全ての医療従事者はガウン、手袋、使い捨てサージカルキャップ、膝下まで覆うシューズカバー、ゴーグル、N95マスクなどの個人防護具を着用し、患者にはフェイスマスクを装着させた。

 入院3日目に自然経腟分娩で娩出(Apgar score8/9)。児娩出の直前に一過性の体温上昇(38.5℃)があったが自然回復し、その他の合併症はなかった。なお、臍帯遅延結紮は行わなかった。娩出後は母児の皮膚接触を禁じ、児を保育器に収容して状態の安定後に個室へ移送した。児は出生後24時間時点の検査でCOVID-19陰性であった。

 入院6日目、母親の症状が改善し新生児感染の徴候も見られないことから母児ともに退院となった。また、夫はCOVID-19陽性が判明したため、近くのホテルに隔離された。

 その後、電話により出産後のフォローアップを行ったところ、新生児感染の徴候は認められていない。母親には軽度の乾性咳があるものの、発熱や息切れはない。さらに、分娩後7日時点で医療従事者・介護者の感染も確認されていないという。

 今回の症例提示は、COVID-19の感染が疑われる妊婦およびその配偶者や新生児のケアに関わる医療者にとって参考になる知見といえそうだ。