大腿が太い肥満者は高血圧リスク低い

中国・地域コホート研究
 2020年04月14日 18:49
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© Getty Images ※画像はイメージです

 肥満・過体重の人は太腿の周囲の長さ(太腿周径)が大きいほど血圧が低く、心臓疾患リスクが低下する可能性が示された。中国・上海交通大学のJie Shi氏らが、中高年住民コホートのデータを解析した結果をEndocr Connect(2020; 9: 271-278)に報告。肥満・過体重者では、大腿により多くの体重負荷をかけることが健康に寄与し、高血圧の早期発見にも役立つ可能性が考えられるという。
体格別に血圧と大腿周径の関連検討
 世界の高血圧(140/90mmHg超)患者は10億人以上と推定され、主要な公衆衛生問題となっているが、早期発見が難しい。

 一方、身体計測は低コストで、各種周囲長の異常が特定の疾患リスクマーカーになる。大腿周径が小さいことは、糖尿病、心血管疾患、全死亡のリスク増加に関連することが報告されている。しかし、大腿径と高血圧の関連を検討した大規模研究は少ない。

 そこでShi氏らは、2011~12年に40歳以上の中国地域住民25万人を対象に実施された横断研究REACTION※の一環として、中国中高年住民コホートにおける大腿周径と高血圧との関連を検討した。

 上海市崇明区在住でベースライン時に下腿周径を測定した9,520人(男性3,095人、女性6,425人)を抽出し、①正常体重4,172人②過体重3,864人(BMI 24~28)③肥満1,484人(BMI 28以上)―に分けて血圧と大腿周径(臀筋直下を計測)との関連を検討した。

エスト周囲長とは独立してリスク低下と関連
 正常血圧と高血圧の内訳は、男性が1,363人と1,732人、女性が3,586人と2,839人。正常血圧群よりも高血圧群で平均年齢が高かった(男性:56歳vs. 59歳、女性:53歳vs. 58歳)。平均大腿周径は男性が53.3cm、女性が52.6cmだった。

 正常血圧群に比べて高血圧群で大腿周径が小さかった(正常体重:51.2cm vs. 50.9cm、P=0.011、過体重:53.9cm vs. 53.3cm、P<0.001、肥満:56.6cm vs. 55.4cm、P<0.001)。

 大腿周径は収縮期血圧拡張期血圧空腹時血糖値、総コレステロール値と逆相関を示した。

 大腿周径で三分位(男性:51.2cm未満、51.2~55.3cm未満、55.3cm以上、女性:50.7cm未満、50.7~54.4cm未満、54.4cm以上)に分け、多変量回帰分析を用いて年齢、性、喫煙、飲酒量、身体活動、学歴、C反応性蛋白質CRP)、アディポネクチン、BMI、ウエスト周囲長で調整、高血圧との関係を検討した。

 その結果、高血圧リスクは、大腿周径が最小の第1三分位群と比べ最大の第3三分位群では、過体重者〔オッズ比(OR)0.68、95%CI 0.59~0.79、 P<0.001〕と肥満者(同 0.51、0.38~0.70、 P<0.001)の両方で有意に低かった。

 従って、ウエスト周囲長やBMIとは独立して、大腿周径が大きいこと(男性55cm以上、女性54cm以上)が高血圧リスク低下に関連していた。

 さらに、大腿周径と高血圧との相関は、過体重よりも肥満で強かった。一方、正常体重では、大腿周囲長と高血圧に有意な関連はなかった(P>0.05)。

大腿体組成との関連を解析予定
 Shi氏らは「過体重・肥満の中国人では、大腿周囲が大きいことが高血圧リスク低下に関連していた。下腿周径は、過体重・肥満者の高血圧および心疾患など他の合併症の早期発見・予防のために安価で有用な指標となりうる」と結論している。

 共著者で同大学のZhen Yang氏は「腹部の脂肪とは対照的に、脚の脂肪は代謝に有益な可能性がある。その理由として、大腿筋/脂肪が皮下に蓄積し、糖・脂質代謝や血圧の安定化に有用な種々の物質を分泌することが考えられる」と説明。ただ、人種や活動性によって下腿周囲のサイズは大きく異なるため、今回の研究で用いた下腿周径は他の母集団の参考値にならない可能性があるという。

 同氏は「大腿の体組成(脂肪量、筋量、骨量および蛋白量)を測定することで血圧との関連をさらに検討したい。これらの体組成比率の違いは、大腿周径と血圧の関連を解明する手がかりとなり、将来の治療法の開発に役立つ可能性がある」と述べている。

※REACTION 、Risk Evaluation of cAncers in Chinese diabeTic Individuals: A lONgitudinal