顔の3D画像、睡眠時無呼吸を高精度で判別 2020年05月15日 05:10

顔面の三次元(3D)画像の解析により閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)の有無を判別できる可能性を示した研究結果を、オーストラリア・University of Western AustraliaのPeter Eastwood氏らがJ Clin Sleep Med(2020; 16: 493-502)に発表した。OSA患者とOSAのない成人の顔面の3D画像データを用いたこの研究では、測地線距離(曲面上の2点を結ぶ最短距離)を測定することでOSAの有無を89%の高精度で判別できることが示された。同氏は「顔面の3D画像はOSAのスクリーニングツールになりうる」と期待を示している。
頭部・顔面の構造はOSAの素因の1つ
 頭部と顔面の解剖学的構造はOSA発症の素因として重要であることが知られている。Eastwood氏らは今回、地域の医療機関の患者および西オーストラリア州の長期コホート研究であるRaine Studyの参加者のデータを用いて、顔面の直線距離および測地線距離に基づいたOSAの予測アルゴリズムを構築し、その精度を検証した。

 顔面の3D画像データは①非OSA〔無呼吸低呼吸指数(AHI)5未満〕②軽症OSA(同5以上15未満)③中等症OSA(同15以上30未満)④重症OSA(同30以上)―各100例、計400例から収集。その上で、3D画像の24点の解剖学的ランドマーク間の直線距離および角度、測地線距離を測定。これらの測定値の組み合わせによるOSAの有無の判別能を線形判別分析(LDA)および受信者動作特性(ROC)曲線解析により評価した。

OSAの有無を89%の精度で判別
 その結果、頭部と顔面の解剖学的構造における直線距離の測定値と比べて、測地線距離の測定値はOSAの有無の判別能に優れていた(分類精度はそれぞれ86%、89%、P<0.01)。また、直線と測地線の測定値を組み合わせた予測アルゴリズムによって分類精度は最大で91%まで向上した。

 一方、OSA判別の閾値をAHI 10以上または15以上とした場合、分類精度は低下した。

 以上を踏まえ、Eastwood氏らは「顔面の3D画像はOSAの判別において有用であることが示された。また、測地線の測定によって判別能が向上することが示された」と結論している。

 米・ENT and Allergy AssociatesのOfer Jacobowitz氏らは、同誌の付随論評( 2020; 16: 469-470)で「将来的に3D画像の撮影がスクリーニングのツールになりうる。特に患者のデジタル健康管理デバイスや病歴のデータとの併用も考えられる」としている。

 また、Eastwood氏も「これまでの研究で睡眠時無呼吸には遺伝的素因が関与していることが示されているが、顔面の構造はその重要な要素である」と説明。その上で「顔面の3D画像の撮影は低コストで多くの人が受けられる初の睡眠時無呼吸のスクリーニングツールになりうる」との見解を示している。