菜食主義で、骨折リスクが上昇
動物性のタンパク質を
摂取しない食習慣全般を
菜食主義と呼んでいますが、
動物性タンパクを一切摂取しない
完全菜食主義(ビーガン)、
肉は食べないが魚は摂取している
魚介菜食主義(ぺスカタリアン)、
肉や魚は食べないが、卵や乳製品は
摂取している一般的な菜食主義(ベジタリアン)まで
多種多様です。
これまでの研究で、
菜食主義者はがんや糖尿病、肥満、
高血圧、心臓病といった
発症リスクが低下すると報告されています。
いっぽうで、骨粗しょう症の
発症リスクやサルコペニア(筋肉量減少症)の
発症リスク、特に股関節骨折リスクが肉を
食べている人に比べて、
2.3倍も高いとの英国のオックスフォード大学の
トン博士らの研究報告が話題を呼んでいます。
研究チームはEPIC-オックスフォード研究に
参加した英国在住の成人男女
54,898人(平均年齢40~50歳)を対象に、
肉食(29,380人)、ぺスカタリアン(8,037人)、
ベジタリアン(15,499人)、ビーガン(1,982人)
などの食生活と骨折の発症リスクとの関連性を
1993年から2016年まで、
平均18年に渡り追跡調査しました。
その結果、研究期間中に
骨折事例が3,941件報告されました。
内訳は腕の骨折が566件、
手首骨折が889件、股関節骨折が945件、
脚骨折が366件、足首骨折が520件、
その他(鎖骨、肋骨、脊椎)骨折が467件でした。
それぞれの食生活と骨折との関連性を調べた結果、
ビーガンは肉を食べている人に比べて
骨折リスクが43%も高いことが分かりました。
部位別にみると、特に股関節の骨折、
つまり大腿骨頸部骨折の発症リスクが2.31倍、
脚骨折の発症リスクが2.05倍も高いことが
明らかとなりました。
骨粗しょう症は、
骨のカルシウムが減少し、骨密度が
低下することが発症の主要因であると
考えられていましたが、
最近ではコラーゲンなどの骨を構成する
タンパク質成分が減少して骨の強度が弱くなる
ことも重要であることが指摘されています。
トン博士は、ビーガンの食事による
カルシウムの摂取量が不足している点を
指摘していますが、肉に含まれている
タンパク質成分の不足も大きいと思われます。
肉の摂取は、中年期の生活習慣病では
要注意の食材ですが、肉の質にも
注目する必要があります。
牛肉には牧草牛と穀物牛があり、
餌の違いから生活習慣病の発症リスクに
差があることが指摘されているので、
牧草牛をお勧めしています。
また、豚肉にはビタミンBが豊富に含まれていて、
高齢期には骨密度を保ち、
骨を強くすることが重要で、
カルシウムなどの骨のミネラル成分、
肉に含まれるタンパク質成分を
しっかり食生活に取り入れることが重要です。